ネットショップの作り方と経営会計【その3】

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原価管理をしよう!

ネットショップの運営
-会計的視点から-

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- 2015.07.06 -

ネットショップ作り方と原価・利益率

ネットショップの作り方/運営で、リスティング広告等の出稿を検討する場合があります。
広告出稿では、予め予算を設定することになります。
(広告については、web広告【種類と特徴】~その1~や、web広告【種類と特徴】~その2~もご参照下さい。)
では、幾らの予算を計上すれば、効率を最適化できるでしょうか。
以下では、広告宣伝費の原価と利益率について、見ていきます。

ネットショップと広告効率の指標

前々回の課題の二つ目が、「広告費上限:売上高の10%、という設定は妥当か?」でした。
(前回、前々回については、 ネットショップの作り方と経営会計~その1~および、 ネットショップの作り方と経営会計~その2~をご参照下さい。)

投資効率を見る指標の一つに、ROASという考え方があります。
(ROAS=Return on Advertising Spend)

ROASの計算式は以下のとおりです。

  • ・ROAS(%)=(売上高÷コスト)×100

ROASが100%以上であれば、最低限の広告コストは回収できています。
しかし、売上高の10%を目指すならば、ROAS=1,000%、ということになります。

なお、商品特性等によっては、LTVという考え方があることも、念頭に置いておきます。
LTVとは、顧客生涯価値のことです。
仮に、ROASが100%未満となった場合、撤退という選択肢になるかもしれません。
しかし、長期的には、利益に繋がる場合もあるので、注意が必要です。
(例えば、OA機器を格安販売し、保守契約で利益を得る、等)

ところで、「原価」とは何でしょうか。
以下では、原価と利益の関係について、見ていきます。

ネットショップにおける原価と利益

ネットショップの作り方で、把握しておきたいのは、原価/利益構造です。
原価と利益の関係について、一例を図示すると、以下のとおりです。

ネットショップ原価構造

原価は、変動費と固定費に分けられます。
それぞれを簡単に説明すると、以下のとおりです。

  • ・変動費:販売数量などに比例して増減するコスト
  • ・固定費:販売数量などに関係なく発生するコスト

ネットショップの変動費には、仕入れた商品の原価、発送費、広告費などがあります。
(ここでは、リスティング広告=変動費、とします)

一方、固定費について、以下のようなものがあります。

  • ・人件費:給料、社会保険料等
  • ・減価償却費:器具備品等、設備にかかる経費
  • ・地代家賃:倉庫/事務所家賃等

極端に言えば、変動費<売上高、である限り、利益が出ます。
上記例でいうと、広告宣伝費<45%、で設定することになります。
このとき、ROASは、(100%÷45%)×100=222%、となります。

理論上、広告費を掛けるほど、売上高は上昇すると思われます。
しかし、過度の広告費は、固定費を回収できず、赤字となります。
そのため、ROAS推移と、固定費回収バランスとを見ながら、自社の適正水準を設けます。

ネットショップにおける原価低減

ネットショップの利益率向上には、①売上増加、②経費削減、の両面から改善を検討します。
売値は市場相場等に依存するため、自社でコントロールするのは難しいかもしれません。
しかし、②のコントロールは比較的容易です。
ネットショップにおける、商品の利益性が落ちてきた場合、以下を検討します。

  • 【変動費削減】
  •  ・返品率の低減
  •  ・懸賞/試供品サービスの見直し
  •  ・送料無料基準の引上げ
  •  ・広告費パフォーマンスの継続的測定
  • 【固定費削減】
  •  ・パート社員比率の上昇
  •  ・アウトソーシング化(問い合わせ業務等)
  •  ・業務内容/付加サービスの見直し、廃止

①を優先させがちになりますが、利益率の維持・上昇には、②の継続的改善が必要です。
処理は煩雑になりますが、可能であれば、商品アイテム別に採算分析できればベターです。
その場合の課題は、固定費のアイテム別配賦をどうするかです。

ネットショップにおける固定費配賦

固定費配賦とは、各商品毎にかかった固定費を各々に負担させるための手続きです。
以下、具体例を挙げてみます。

  • A)月給:20万円の営業員が、商品a:1個/月、を販売した
  •  →商品aにかかる固定費=20万円÷1=20万円/個
  • B)月給:20万円の営業員が、商品b:10個/月、を販売した
  •  →商品bにかかる固定費=20万円÷10=2万円/個

上記では、商品aに20万円の固定費が配賦されます。
一方、商品bには2万円の固定費が配賦されます。

固定費を回収するためには、商品aでは20万円の利益が必要。
一方、商品bの場合は、2万円の利益で済みます。
そうなると、ネットショップで、商品a/bに掛けられる各広告費も変わるかもしれません。

実際は、商品アイテム別固定費の正確な配賦は手間がかかります。
そのため、理論値(係数等)で管理し、定期的に数値の見直し等を行います。

ところで、会社によっては、月別のアイテム別採算性を把握したいニーズもあるかもしれません。
その場合、ACCESS等でプログラム開発し、Webデータと連動させる作り方も一つの手です。
(弊社では、このようなプログラム開発/分析等も対応可能です。)

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